組織力強化の基本
働き方改革、生産性の強化、社員のエンゲージメント、イノベーションの促進、様々な改革が政府も推進しながら進められていますが、今年度、皆様の組織はどのような変革を推進されていますでしょうか?
「変革の7割は成功していない」という実態はいまだ続いていますが、なぜなのでしょうか?
組織改革の失敗の原因の一つは、組織診断の欠如です。組織開発学では、「組織も人間の体と同様、(外部環境からの影響、新陳代謝の状態、活動の在り方により)、時の経過と共に衰退する」という原則があります。
人が成人病検診(生活習慣病検診)を受けることにより、重篤な疾病を未然に防いだり、または早期治療を可能にするように、組織も定期的に組織診断を受けることは、特に環境の変化の多い現代においては必須の業績強化と未病のための手段といえるでしょう。
但し、単に受ければビジネスが伸びるというものでもありませんので、本号では、業績向上のための組織診断成功のポイントをご紹介します。
組織診断の成功要因
社員意識調査を通して、自組織の診断をしている企業は、少なからずありますが、日本企業の絶対数から考えると、実施している企業はまだまだ十分とは言えません。また、多くの企業は、社員満足度調査、メンタルヘルス調査、エンゲージメント調査などを多く使っています。社員の満足度やエンゲージメント、メンタルヘルスの状態を理解するのは大変重要です。これらの情報をどのように活用するかが課題となります。
さて、日本に品質管理技法を教授し、日本の製造業の生産性と不良率を急激に改善してくれたデミング賞で有名なデミング博士の言葉で、「失敗の85%は仕組みの問題である、人災ではない」というものがあります。組織開発で言う、「すべての組織は、現在の結果を出すようにデザインされている」と同様ですが、現在出している業績や組織文化は、今ある業務プロセスや制度で作られているということです。これは、現在の会社の仕組みを分析すれば何が機能しているのか、いないのかがわかるということになります。
会社の仕組みを理解するという観点から、米国マルコムボールドリッジ経営品質賞(MB賞)の診断のしくみが有名です。これは米国がビジネス競争力を落とした1970年代後半から、その原因究明と打開策探索にグローバルにおける成功企業を調査して解明した、成功し続ける企業のしくみを枠組みとした組織の経営品質の診断です。私の前職2社目、P&Gの組織開発部門(Organization Excellence)もMB賞のしくみも取り入れた組織診断を使っていました。
組織診断(意識調査)に欠かせないポイントは以下のものがあります。
1) 全体像が把握できる
2) 組織のしくみの機能状態がわかる
3) 成果と仕組みの相関関係がわかる
まずは、個々の事象だけではなく、主な状況が包括的にわかる、全体像が見えることが重要です。例えば、満足度やメンタルヘルスだけではなく、エンゲージメント、リーダーの効果性、企業文化などの状態を見ることができることです。(また、個別の状況を様々なアセスメントで診断するのは、それを受ける社員にとっても非生産的です。)
次に、そういった状態はどのような現在のしくみから生まれたのかを把握するために、組織内のしくみを精査できなくてはなりません。社員意識調査で満足度やエンゲージメント度合いがわかっても、なぜそうなったのかを仕組みの観点から原因究明ができないと打つ手は明確になりません。皆さんは自社組織のどのようなしくみを診断していますか?
業績を生むフレームワーク
昨今よく聞かれる、生産性向上、長時間労働の改善、エンゲージメントの向上、イノベーションの強化などの課題がありますが、皆さんの組織の課題は何でしょうか?それに対して何を行っていますでしょうか?
例えば、政府推進の「働き方改革」ですが、働き方を変えるということは、人の考え方と行動様式を変えること、即ち、企業文化を変えることです。そして、奥の組織変革の失敗は、組織文化の変革に至らなかったからです。単に、フレックスを入れる、ネットワーク環境の改善、制度の電子化、残業削減命令、などでは企業文化は変わりません。企業文化を醸成している、または強固に守っているしくみやプロセスを包括的に修正する必要があります。
今回ご紹介するのは業績強化のために、組織文化を強化するために創られた、「オーガニゼーション・パフォーマンス・モデル(OPM)」のフレームワーク(枠組み)です。
1) ミッション/ビジョンの浸透
2) 戦略策定と展開のしくみ
3) 業務プロセス
4) 顧客対応
5) 情報共有/コミュニケーション
6) 人材開発/組織開発のしくみ
7) 報奨制度/人事制度
8) リーダーの効果性
9) 企業文化
10) エンゲージメント
組織も人の体と同じで、病を未然に発見し、対処し、健康に成長し続けるためには、定期的な診断が不可欠です。直観ではなく、しくみで組織の状態を理解する組織診断をお試しください。
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