ニューノーマル時代で不可欠な経営/人事の在り方
新型コロナウイルスの影響で、ソーシャル・ディスタンシングやリモート・ワークを余儀なくされている社員は増え続けています。テレワークによる通勤時間や通勤ストレスの削減の一方、多くの企業は社内外のコミュニケーションの低下、信頼関係の低下、生産性の低下などの課題を訴えています。
マッキンゼー社のグローバル調査では、9割のCEOは「ソーシャル・ディスタンシングとリモート・ワークは今後も続く」と回答しています。コロナ禍という大きな変化に直面する中、企業を元気にするには、人事部の貢献が不可欠です。欧米の企業では企業戦略や製品戦略の見直しと共に、本社機能とオフィスの在り方の見直し、オフィススペースの縮小や移転などを開始しています。勝ち組企業では、人事施策の見直しと組織戦略の強化が図られ、生産性や組織パフォーマンスを高めています。皆様の組織では、どのような新たな人事施策を実行されているのでしょうか?その成果はどのようなものでしょうか?
本コラムでは、人事部門の役割、そして、コロナ禍による大変化の時期にあるべき人事のあり方をご紹介します。
世界最大の人事関連の協会、人材マネジメント協会(SHRM = Society for Human Resource Management)は、人事部の役割を以下のように唱えています。
- 「企業戦略開発及び実行の重要なパートナーであり、CEOの戦略的パートナー、ラインのビジネスパートナーとして組織力強化をリードする。」 その結果として、ビジネス強化とイノベーション促進を支援する。
欧米の大手優良企業のスコアカードにある人事部の目標は、1)従業員あたり売り上げと利益、2)能力基準を満たしている従業員の割合、3)従業員エンゲージメント度合い、4)サクセッションプラン完成度(後継者充填度合い)などを含んでいます。(人件費削減ではありません。)激変の時期にいかにこれらの目標を達成するのでしょうか?
人事部門の貢献度の強化を推進するミシガン大学のアルリッチ教授は、人事部門は以下の4つの観点から仕事のあり方と人事施策を考えるように、著書、「HR Champion」で説いています。
- 戦略的管理
- 変革管理
- 従業員の貢献度の管理
- 人事インフラの管理
ほとんどの企業の人事部門は4番目の人事インフラ(人事制度・仕組み・プロセスの構築や運用)に大半の業務の時間を使っています。教授の推奨は、他の3つにエネルギーをシフトすることです。特に、コロナ禍で多くの変革を必要としている現在、戦略的管理を推進しなくてはなりません。そのためには、従業員の現状・課題・期待を把握し(従業員の貢献度の管理)すること、そして、新たなビジネス戦略の実現に必要な新たな人事施策を導入するにあたっての変革管理を実行しなくてはなりません。もちろん、ソーシャル・ディスタンシングやリモート・ワークを実現するための人事インフラも重要ですが、多くの企業では2020年度内にその基盤は築かれています。
単発的や近視眼的な変革や改革は失敗します。確実に変革を行う、また継続的に企業や組織を伸ばすためには、長期的視野に立った組織・人事改革や戦略的人材開発が不可欠です。戦略的人事を実現する大まかな流れは以下の通りです。
- ビジョン、ゴール、経営戦略の把握とすり合わせ
- 戦略達成のために必要な組織と人の要件を明確にし、組織・人事戦略と施策の作成
- 組織・人事戦略実現のための具体的な行動計画の作成と実行(PDCAを回す)
是非、この変化を組織の好転の機会にして、経営戦略を実現するための戦略的人事施策を導入してみてはいかがでしょうか?
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